
アンラーニングとかアンラーンとか脱学習とか、あんまりピンとこないんですけど……。

アンラーニングは新しい思考法を身につけるために、古い価値観や習慣を捨てる行為よ。
その新しく身につけたものもいずれ古くなるから、サイクルを回しつづけることが必要になるわ。

なるほど〜。ふるいじぶんとはもうおさらばなんですね!

漢字を捨て去るのは困るんじゃないかしら……。
こんにちは、Yunです!
ビジネススキルについて調べるなかで「アンラーンとかアンラーニングってなに?」「アンラーニングってどうやってやるの?」と疑問に感じていませんか?
そんな悩みをお持ちの方に、こちらの記事ではアンラーニングの意味ややり方を解説します!

この記事を読めば、自分を変えていくためのひとつの方法がわかります!

アンラーニングとはなにか

アンラーニング(Unlearning)とは、すでに獲得している知識・経験・価値観・信念などを意図的に自分のなかから取りのぞくことをさします。
アンラーニングは「学習棄却」「学びほぐし」「脱学習」などと訳されます。また、動詞であるアンラーン(Unlearn)もほぼ同じ概念です。
目的は「忘れること」ではなく「新しい思考回路をつくること」
アンラーニングの目的は忘れることにあるのではなく、新しい思考回路を生み出すことであり、そこから新たな解決策を生み出すことにあります。
つまりアンラーニング(脱学習)という言葉に反するようですが、アンラーニングの一連のプロセスには学習が含まれています。
むしろ、新しいことを習慣を獲得することによって、自分の脳を「新しい習慣」で埋め尽くし、古い思考法を使わなくなることがアンラーニングのしくみであるといえます。
アンラーニングは連想プロセスを変える
人の記憶には連想性があり、新しく得た情報を自然と既知の情報と結びつけて考える習慣があります。
新しい情報を得たときに脳が自動的に古い情報と紐づけるせいで、わたしたちはその新しい情報についてわかっている気分になってしまい、誤った理解をすることがあります。
この過ちは常識や状況が急速に変化する近年において特に起こりやすくなっています。
わかっていない人ほどわかっている気分になりやすい
連想プロセスの誤りと関係した心理効果のひとつに、「ダニング=クルーガー効果」があります。これはあるタスクの成績が低い場合、成績が優秀な人よりも自分を過大評価しがちであるという認知バイアスをさした言葉です(参考文献)。
ダニング=クルーガー効果は、過去の成功体験に縛られて実際には最新の現実を把握していない人ほど、「十分わかっている」という考えに陥りやすいことも表しています。

いつまでも若いつもりだったり、時代を理解しているつもりになっていたりするかもしれないってことですね。
誤った判断は知性の欠如のせいではなく、過去の体験に縛られているから
連想プロセスの誤りは、決して知的能力が低いから起こるわけではありません。
脳の連想プロセスに関する能力は認知能力のひとつであり、知能のなかでも結晶性知能(Gc)と呼ばれるものと関係しています。そのため、IQが高い人ほどこの記憶の連想性が強くはたらくことになります。
つまり知的能力の高い人ほど素早く新しい情報と既知の情報を結びつけることができますが、アンラーニングはそのことがかえって人を過去の情報に縛りつけることになる点を問題視しています。

知識の連想がはたらく際には、過去の体験にもとづいた判断をするわ。
このプロセスを変更する試みがアンラーニングよ。
アンラーニングとリスキリングの違い
リスキリング(Reskilling)とは、新たな時代に適した技術を身につけることをさします。
アンラーニングとリスキリングは似ていますが、リスキリングが新しい技術の「獲得」に焦点をあてた積み重ねの概念なのに対して、アンラーニングは古い習慣の「停止」に焦点をあてた入れ替えの概念であることが違いとなります。
アンラーニングは、古い価値観が新しい社会に適応しようとする際の障害となることを問題視しています。これまで積み重ねてきた経験や知識のうち、これからも使いつづけられるものとそうでないものを識別し、もう使えないものを断捨離するのがアンラーニングと言えます。
アンラーニングの重要性
アンラーニングは、この急速に変化しつづけて予測不可能な現代社会において特に重要になってきたスキルです。
かつて正しかったやりかたが今目の前の状況には適用できないというケースが、いたるところに存在しています。
知識や経験はどの時代でも重要な武器ですが、現代においてはわたしたちを過去に縛りつけて成功から遠ざけることもある諸刃の剣となっているのです。
アンラーニングは老子の教えに通じる
古代中国の思想家、老子は「無為(むい)」を道の境地としましたが、無為とは得た知識を捨てつづけることでたどりつくものだと説きました。
これは学ぶことが悪だと言っているわけではなく、知識がときに人の成長を阻害することがあることを説いているのであり、まさにアンラーニングの理念と合致する部分です。
為学日益、為道日損。損之又損、以至於無為。
(学を為せば日々に益し、道を為せば日々に損す。これを損して又た損し、以って無為に至る。)
『老子』第四十八章
アンラーニングとアンラーンの違い
アンラーニングとアンラーンは混同されており、使い分け方は人によって異なります。
ただし一般的にアンラーニング(アンラーン)全体を意味するときは「学ぶ – 捨てる – 獲得する」の一連の流れをさしていることは共通しています。
この流れのなかの一部分である「捨てる」作業のこともアンラーン(脱学習)と呼ぶので、全体をみているのか部分をみているのかで表す内容に違いがあり、ここが少しややこしいポイントになっています。

用語が一定しないのは混乱のもとですね!

この記事では全体をさすときは「アンラーニング」、プロセスの一部分である「捨てる」行為は「アンラーン」と使い分けているわ。

アンラーニングのデメリット

アンラーニングのデメリットは、実行の難しさにあります。
これまで得てきた成功体験や習慣を捨て去ることは、人によってはとても困難に感じられることです。
むしろ、自分の信念や価値観を捨てるなどということは頭の片隅にも浮かばない、という人も世の中には大勢いると思われます。
アンラーニングは成功体験が豊富な人にとっては、感情的にも社会的にも自分のアイデンティティを変更することにもなるため、その変化は非常に困難なことに映るはずです。
しかしあなたが組織のリーダーか、またはなんらかに挑戦している人であれば、変化しつづける世の中において成功を手にするためには最新の流れに適応しなくてはいけません。
アンラーニングのやり方
アンラーニングは根本の理念はある程度共通理解がありつつも、具体的なやり方は研究者によってさまざまなものが存在します。
この記事ではまず、欧米で注目されている「学習・脱学習・再学習」について紹介します。
学習・脱学習・再学習のサイクル

学習
学習(Learn)とは「学び」であり、これは学校や資格の勉強だけをさすものではありません。
人は日々多くの情報を吸収し、自分のなかに蓄積しています。これは意識的なものも無意識的なものも含みます。
脱学習
脱学習(Unlearn)とはもう古くなった習慣や固定観念を捨てることです。
これは、古いことを「忘れる」というよりも「断つ」に近いといえます。実際には記憶から消すわけではなく、その思考回路を使わないと意識することが脱学習のなかみです。
習慣は、ふつう何も考えずに自然に行動化されてしまいます。習慣的な行動はなんらかの一連の動作のなかにあり、トリガーとなるできごとに対して無意識で反応します。
脱学習はこの無意識の習慣を抑制します。
再学習
再学習(Relearn)は脱学習によって古い観念を捨てたあとに、まったく新しい思考回路を脳につくることをさします。
新しいやり方や新しい常識を身につけ、その価値観をもとにした習慣を新たにつくっていくことでもあります。
「新しい思考回路をつくる」というのは比喩ではなく、実際、脳内の神経細胞によってつくられるシナプスのネットワークはくり返し使用することで脳内の永続的な回路として保たれるようになります。これは何度も意識的に思考した内容が習慣化されやすいことを意味しています。(参考文献:英語)
この再学習で重要なことは、ここで新たに学んだこともいつかは必ず古いものになるという点です。
最新の常識、最新の社会環境は今後も変化しつづけます。
アンラーニングはこの「学習・脱学習・再学習」をサイクルとして回しつづけることが重要であり、生物が新陳代謝をとめると死んでしまうように、アンラーニングのサイクルがとまれば社会に適応することが困難になってしまいます。
学習・脱学習・ブレークスルーのサイクル

上述のとおり、アンラーニングの手法については研究者によってさまざまな意見があります。
バリー・オライリー氏は著書『アンラーン戦略 「過去の成功」を手放すことでありえないほどの力を引き出す』のなかで、従来的な「学習・脱学習・再学習」の流れではなく「学習・脱学習・ブレークスルー」をサイクルとすべきだと提唱しています。
再学習をブレークスルー(打破)に置き換えるとなにが変わるのでしょうか。それは、アンラーニングが単に学習という個人の内側で完結するものではなく、自分の外側にある社会にはたらきかけるものであるという定義の変更を意味します。
ブレークスルー
ブレークスルー(Breakthrough)とは、学習した内容を捨てて再学習をおこなった結果得られる、新たな視点です。
ブレークスルーというと、なにか大きなイノベーションを起こり、眼に見える成果をあげたりすることをイメージするかもしれません。
実際には、アンラーニングで得られるブレークスルーはそれよりももっと小さな単位のできごとです。ブレークスルーは本来「突破・打破・打開」を意味する言葉ですが、ここでは「脱皮」と言い換えてもいいかもしれません。
自分自身が古い価値観を脱ぎ捨てて、新たな自分になること、新たなものの考え方で行動できるようになることがブレークスルーです。
だからブレークスルーによって得られる結果は、ささいな変化でしかないことがあります。たとえば、部下に会ったときに自分からあいさつできるようになった、感謝と謝罪についてはなによりも優先して伝えられるようになった、などもブレークスルーの結果得られる変化です。
アンラーニングの具体例
ここからは、アンラーニングの具体的な例として考えられるものを紹介します。
ここではどれもとてもささいな内容を紹介しています。アンラーニングはなにか大それた挑戦だけを意味するのではなく、アンラーニングのきっかけは日常に存在しているということを感じてもらいたいと思います。
社内システムのアンラーニング
企業組織全体におけるアンラーニングは、たとえば業務アプリケーションソフトが更新された際に必要になります。
Gmailなどのアプリケーションについて学習した経験があり、レイアウトやインターフェースに慣れてきたある日、GoogleがGmailを大幅にアップデートをしたとします。
操作感やレイアウトが変わってもGmailを使い続けるためには、アンラーニングが必要になります。
旧バージョンのGmailの知識はもう古くなって使わなくなった知識です。これを捨て去ることが脱学習で、新たに操作方法を学びなおすことが再学習です。
働き方のアンラーニング
近年は働き方改革の効果もあり、育休制度の拡充やリモートワークの普及など、個人の働き方の変化も激しくなっています。職場によっては子連れ出勤が許可されている場合もあります。
このような制度を利用することや、家庭の事情で休みを取ることを極度に忌避しているとしたら、その思考回路はもう古いものかもしれません。
もしあなたがリーダーでありながら周囲が制度を利用することを妨害しているなら、チーム全体が時代錯誤となっている可能性もあります。
自分の価値観が古いものであることを認め、その思考法をやめることが脱学習であり、新たな視点でチームや自分自身の働き方を変えることはブレークスルーにあたります。
個人の態度のアンラーニング
『習慣が10割』という本もあるように、個人の行動の多くは習慣によって決定されています。
そして習慣は育ってきた環境、これまでの経験によって規定されています。
「自分はダメだ」と考えたり「あの人は嫌なやつだ」と考えたりすることも、あなたのなかで習慣化された反応によって引き起こされています。
「仕事で結果を出せないから自分はダメだ」と考えているなら、「仕事ができない人間 = だめ人間」という価値観を捨てるのが脱学習で、人間の価値を考え直すことが再学習です。
または、従来の仕事のやり方を脱学習 – ブレークスルーのサイクルによって変えてみて、「仕事で結果を出す」という方向に自分を変えることも考えられます。
