マンセル表色系の「表色系」ってなんなんですか?
色の表し方のことよ。マンセル表色系の場合、色を色相・明度・彩度という3つの尺度で表現するの。
草食系男子、みたいな感じですかね。表色系男子。
全然そんな感じではないわ。
こんにちは、Yunです!
色彩について調べるなかで「マンセル表色系ってなに?」「ほかの表色系と具体的にどう違うの?」と感じていませんか?
そんな疑問をお持ちの方に、こちらの記事ではマンセル表色系の特徴や意義、マンセル表色系を採用するメリットなどについて解説します!
この記事を読むとマンセル表色系が色彩系の資格でかならず問われるほど重要な理由がわかります!
マンセル表色系とはなにか
マンセル表色系(Munsell Color System)は現在もっとも普及している表色系のひとつです。
アメリカの美術教師であったアルバート・ヘンリー・マンセル(1858-1918)が考案し、没後に修正がくわえられ、表色系の世界標準として国際的に普及しました。
日本でもマンセル表色系に準拠したJIS標準色標が広く用いられています。
マンセル表色系の特徴
マンセル表色系の特徴は、色相・明度・彩度の10段階が人間の知覚上の段階と一致することです。たとえば、彩度の3から4の変化は彩度の7から8への変化と同じ間隔の変化であると知覚されます。
また、数値的に2つの色の中間にある色は、知覚上もそれらの色の中間に感じられます。
色相・明度・彩度についてはこちらの記事でくわしく解説しています。
従来の色彩論との違い
色相環(カラー・サークル)という概念自体は18世紀のアイザック・ニュートンがはじめて導入しました。ニュートンの色相環はスペクトルの両端をつないで円をつくり、それぞれの色が占める幅の割合に合わせて分割しています。
こののち、詩人のゲーテや化学者のシュヴルールなども色相環を発展させていきますが、それらのいずれもマンセル表色系ほど明確な段階化・数値化はされていません。
マンセル表色系は「知覚にあわせている」「段階的である」という点がポイントなんですね。
マンセルの色彩調和論の特徴
マンセルは生前「心地よいと感じる配色はバランスの結果である」と述べており、色彩に関してバランスをもっとも重視していました。
マンセル表色系の色立体や色相環、等色相面はマンセルがバランス(調和)に細心の注意をはらったことがわかるつくりとなっています。
中間の灰色を通ればバランスがとれる
色立体におけるバランスの中心点は明度5のグレイ(N5)であり、2色を選ぶときにN5を結ぶ直線がこの中心点をとれば調和します。
中間は灰色なんですね〜。
バランスのとれた面積比を求められる
調和する色の面積比は、明度と彩度を用いた計算で決まります。
(A色の明度 × 彩度) / (B色の明度 × 彩度) = B色の面積 / A色の面積
上記の画像の場合、
(5PBの明度5 × 彩度12) / (5Yの明度5 × 彩度6) = 5Yの面積(60) / 5PBの面積(30)
よって調和する面積比は 5PB : 5Y = 30 : 60 = 1 : 2
この計算式では、高明度・高彩度の色の面積は小さくなり、低明度・低彩度の色の面積は大きくなります。
これは今日のベースカラー・アクセントカラーの発想と似ています。落ち着いた色を基調(ベース)とし、明るい色を差し色(アクセント)として用いるという考え方ですが、そのときの適切な面積比をそれぞれの色の明度と彩度から計算できるのがマンセル表色系の強みです。
これ、便利ですね!
等色相面上の色はすべて調和する
マンセル表色系では、以下の色は調和します。
等色相面上の色はすべて色相が同じなので、つまり1つの等色相面にある色はすべて調和することになります。
マンセル表色系を用いるメリット
マンセル表色系を用いるメリットは主に以下のものがあります。
まとめると「シンプルで感覚的にイメージしやすい」という点がマンセル表色系をつかうメリットであり、ここまで普及した理由であるといえます。
混色系と顕色系の違い
表色系には光を混ぜて色をつくる混色系(Color Mixing System)と人間が心理的に感じる色を色標で表した顕色系(Color Appearance System)があります。
オストワルト表色系は顕色系であるため、人間の知覚(心理)に沿った色の表し方ができます。顕色系はふつう色見本が存在するので、それを直接見せてやりとりすることもできます。
マンセル表色系と同じく顕色系のものに日本色彩研究所が開発したPCCSがあります。
マンセル表色系とPCCSの大きな違いは補色の考え方です。色相環の対向位置にある補色がマンセル表色系は物理補色ですがPCCSは心理補色を採用しています。具体的にはたとえばマンセル表色系では中間的な黄(5Y)の向かいは青紫(5BP)ですが、PCCSでは黄(Y)の向かいは紫(V)です。
物理補色か心理補色かはどちらが優れているというものではありません。ただ、物理補色を採用すると色相の間隔が等しく感じられないという特徴はあります。補色は組み合わせて配色することが多いのでこの違いは目立つ点になります。
また、マンセル表色系は国際的な表色系であり、PCCSは主に日本で採用されている表色系であることも違いとなっています。
ここでいう心理というのは、人間の脳のしくみ上の、みたいな意味よ。
光源色と物体色の違い
色は光源から出ている光そのものの色である光源色と、光が物体に反射して目に入る色である物体色があります。
XYZ色空間やLab色空間など、コンピューターソフトで主流の表色系は光源色をあつかいます。
マンセル表色系は物体色をあつかう表色系であり、絵画や製品デザインなど、人にとって実際にどう見えるかを表すことを得意とした表色系です。
同じく物体色をあつかう有名な表色系にオストワルト表色系があります。オストワルト表色系は混色系の表色系であり、明度・彩度の概念をもたないなどの違いがあります。
じゃあPCソフトのカラーピッカーはマンセル表色系じゃないんですね。
マンセル表色系の色相
マンセル表色系の色相(Hue)は10種類です。
マンセルは赤(R)・黄(Y)・緑(G)・青(B)・紫(P)の5色を基本色相と呼び、それらを円の周りに等間隔に配置しました。
これに黄赤(YR)、黄緑(GY)、青緑(BG)、紫青(PB)、赤紫(RP)の5つの中間色相を加え、マンセルの色相は合計10種となっています。
さらに各色相は5を中心とした1〜10の段階で細分化されます。たとえば緑(G)の代表色相は5Gです。
10種の色相を10段階で区分するため、マンセル表色系の色相は合計100段階に分けることができます。
マンセル表色系の明度
マンセル表色系の明度(Value)は光を100%吸収する理想的な黒を0、光を100%反射する理想的な白を10としています。
マンセルの色の段階は知覚の段階と一致するため、この明度の10段階も知覚的等歩度で分割します。
実際の画材では光を100%吸収することも反射することもできないため、絵具で表せる範囲は1〜9.5の範囲とされています。
無彩色の明度については「N(Neutralの略)」をつけてN2、N3などと表します。
マンセル表色系の彩度
マンセル表色系の彩度(Chroma)は無彩色を0とし、鮮やかさが増すほど段階が上がります。
彩度の最大値は色相によって異なります。マンセルは当時、赤(R)の最高彩度をもっとも高い10とし、赤の補色である青緑(BG)をもっとも低い5と定めました。
マンセルの没後、さらに鮮やかな色料が開発され、現在では最高彩度は15ほどになっています。
彩度の最大値がバラバラだから、マンセル表色系の色立体はデコボコですよね。
マンセル表色系の表記
マンセル表色系では色相をH、明度をV、彩度をCで表し、「HV/C」の形式で表記されます。
たとえば、色相5PBの明度4、彩度が10であれば「5PB 4/10」と表します。
マンセル表色系の色立体
色立体(Color Solid)とはその表色系の色構造を三次元的に表現したものです。色立体の形状は表色系によって異なり、マンセル表色系の色立体は色相・明度・彩度の3つの軸をもちます。
マンセル表色系の色立体は以下の規則に従った形状をしています。
マンセル表色系では色相によって最高明度と最高彩度が異なるので、色立体はいびつなかたちになります。
マンセルは自身の色立体を「カラー・ツリー」と呼び、明度を幹に、彩度と色相は幹をとりまく枝葉にたとえました。
マンセル表色系の等色相面
等色相面とは色立体を縦に切った断面で、縦軸は明度、横軸は彩度を表します。1種類の等色相面のなかにある色の色相はすべて同じです。
マンセルの色立体がいびつなかたちであるため、その断面図である等色相面も色相によってかたちが異なります。
上の図は黄緑(GY)のうち、6GYの等色相面です。明度の最大は9、彩度の最大は12となっています。
知識を役立てるには資格取得がおすすめ
色彩にかかわる知識を仕事に活かしたいなら、色彩検定やカラーコーディネーターの資格取得がおすすめです。幅広い職種で色彩に関する専門知識をもっていることの証明として役立てることができます。