レッジョ・エミリア教育のプロジェクトってなにするんですか?
内容はさまざまな探究活動よ。特徴は子どもの興味関心を出発点とするところと、長期的なものも多いところね。
プロジェクトって名前はなんか仕事みたいですね。
子どもにとっては大仕事よ。仕事でありながら、遊びでもあるっていう点も大事ね。
こんにちは、Yunです!
幼児教育について調べるなかで「レッジョ・エミリア・アプローチのプロジェクトってなに?」「プロジェクトってどんな内容なの?」と疑問に感じていませんか?
そんな疑問をお持ちの方に、こちらの記事ではレッジョ・エミリア・アプローチのプロジェクト活動の特徴について解説しています!
この記事を読めばレッジョ・エミリア・アプローチの特徴がわかります!
レッジョ・エミリア教育のプロジェクトとはなにか
レッジョ・エミリア・アプローチ(以下、レッジョ・エミリア教育)のプロジェクトとは、子どもたちがみずからの興味関心のもとづき、共同でなにかを学んだりつくったり、体験したりする活動をさします。レッジョ・エミリア教育のプロジェクトは「プロジェクタツィオーネ」とも呼ばれます。
本場イタリアのレッジョ・エミリア教育においてはこのプロジェクトは長期的な活動を前提にしていて、数週間から1年以上かけておこなうものもあります。
日本のテーマ保育との違い
テーマ保育とはなにか
テーマ保育とは設定したテーマにそって数週間から数か月かけて子どもたちの活動(遊び・発表の練習など)を調節していく試みのことです。
テーマ保育のテーマは保育者による観察と、子どもたちへのインタビューによって設定されます。保育者が子どもの興味・関心の内容を把握し、それに沿って学びや発見を得られるようなテーマを設定します。
以下は「お店」をテーマにし、ごっこ遊びを通じて商品の流通や、量・交換の概念について学んだ取りくみ事例です。
ごっこ遊びの進展の中で、棚の商品が不足し始めたときが、仕入れについて話し合うチャンス
出典:和光大学現代人間学部紀要 第10号(2017年3月)
だ。この機会に商品がどこから来るか調べることもできる。売買に際して、支払いを通じて交換原理に気づき、品物に値段をつけることを通じて、仕入れ値と売値の関係に気づくこともある。袋の大きさと商品の量の関係や、量り売りのお菓子を通じて重さに気づく。
プロジェクトとテーマ保育の違い
上記テーマ保育に対して、レッジョ・エミリア教育のプロジェクト活動の特徴は以下の点にあります。
テーマ保育が子どもの身の回りの現実や事象を正しくとらえ、正確な知識をもつことを重視する一方で、プロジェクト活動は子どもたちが探究する力そのもの、探究する方法への関心を養うことに重点を置いています。(参考文献)
また、上記のほかにレッジョ・エミリア教育は保育者・子ども・保護者の共同を重視して活動をおこなうということも特徴的といえます。
プロジェクト活動のほうが柔軟なイメージですね。
プロジェクト活動に必要な要素
遊びベースの活動
レッジョ・エミリア教育では子どもの知性と創造性は一体化しています。
ほとんどの活動は遊びをベースにしていて、線画・お絵描き・演劇・人形劇・積み木・実験などと組み合わせてプロジェクトを達成させます。
創発的カリキュラム
創発的カリキュラム(Emergent Curriculum)はレッジョ・エミリア教育全体で重視されている理念のひとつです。
「emergent」とは「さし迫った」「はじめて現れた」という意味の言葉であり、レッジョ・エミリア教育のカリキュラムは子どもがそのとき感じている切実な興味・関心をとても大切に考えます。
プロジェクト活動においても、まず子どもの関心ごとに目を向け、子どもたちが知りたい・経験したいと感じる内容を活動内容として設定します。
ドキュメンテーション
レッジョ・エミリア教育の特徴のひとつに、子どもたちの活動を記録し、それを掲示するドキュメンテーションがあります。
長期にわたるプロジェクト活動では、その活動プロセスのなかでさまざまなドキュメンテーション貼り出されます。
ドキュメンテーションは子どもたちにとって思い出でもあり、自分の活動を見直すための鏡でもあります。
また、保育者にとってはドキュメンテーションを作成することがプロジェクトの進捗と子どもの様子を見つめなおすきっかけになります。
グループ活動
レッジョ・エミリアは他者と共同で活動するなかでのインスピレーションを重視します。
プロジェクトはふつう4〜5人程度の小グループでおこなわれ、子どもたちは協力しあい、議論しあしながら活動を進めていきます。
すべてのプロジェクトは、経験したり学んだりしたことを発表し、お互いに共有することで完結します。
長期にわたるプロジェクト活動のなかで子どもたちは互いの意見を尊重することや、自分の考えを他人のものと比較すること、上手に伝えられる発表方法について学びます。
プロジェクト活動の段階
ここではレッジョ・エミリア教育のプロジェクト活動の各ステップを紹介します。
プロジェクト活動は「テーマ設定 – 探索 – 疑問解決 – 話し合い – 発表 – 振りかえり」のサイクルによって構成されています。
サイクルはくり返すたびに内容を深めていくものであり、ふつう今取りくむサイクルは以前のものと比べて発展的になっています。
レッジョ・エミリア教育は子どもたちの創造性を豊かにすること・自発的に探究できるようになることをめざしています。
幼児期におこなうこのプロジェクト活動もまた、遊びを通じて探究的な態度や自己表現の方法を獲得するためのアプローチとして設定されています。
小さいときからこういうのを経験するって貴重ですね。
テーマの決定
レッジョ・エミリア教育は子どもの興味・関心をスタート地点とすることを重視しています。
テーマ選択においても、保育者が子どもたちを観察・ヒアリングし、子どもたちが知りたい・達成したいと思えるような内容をテーマとしたプロジェクトを計画します。
探索と体験
プロジェクトが動き出すと、子どもたちはさまざまな道具や環境で活動をすすめます。
このとき、子どもは不慣れで予測できない自然界に飛び込むことも練習します。木の葉や木の実、石などもつかって、自然の世界にあるものから創造性を豊かにするための刺激を受けます。
疑問を解決する
この段階では、保育者は子どもたちの活動をとおして湧きでてきた疑問に対して答えを見つけるのを手助けします。
子どもたちは、疑問に感じたことの答えになることを体験していきます。
たとえば、青と黄を混ぜたらどんな色になるのか、泥をさわったらどんな質感なのか、そういった疑問に対する答えを体験を通じて発見します。
子どもたちの疑問はさまざまですが、もっとも大切なのは最初にテーマとした内容に答えていくことです。
テーマはふつうある程度の深みがあるので、答えを見つけるのに数週間または数か月、長ければ1年ほどかけて活動していきます。
話し合いと発表
このステップでは、子どもたちは自分の経験した内容をほかの子どもと共有します。
この共有にももちろん保育者が手伝いますが、自分の知っていることを人に伝える経験によって子どもたちは自尊心や自己効力感を獲得します。
レッジョ・エミリア教育の発表の形式は演劇・人形劇・歌・粘土工作・紙工作・お絵かきなど、さまざまなものがあります。はさみやのりを使って、色とりどりの創作物をつくることもあります。
振りかえり
プロジェクト活動の最終ステップは、ここまでのステップで経験したことを振りかえることです。
保育者は、それぞれの子どもたちが達成してきたことにコメントを用意します。このコメントは、競争的な観点であってはいけないものです。
また、子どもたち自身も自分たちが達成した内容について振りかえり、次のプロジェクトに生かせることをさがします。
この振りかえりは、保育者にとっては子どもたちから学びを得ることでもあります。保育者はプロジェクト活動を通じて子どもたちの成長・変化を見とり、次の活動はそれらを踏まえたものとして設定されなければいけません。
仕事でもフィードバックは大事です!
プロジェクト活動の具体例
ここでは、レッジョ・エミリア教育のプロジェクト活動の具体例を紹介します。
日本ではプロジェクト活動と呼びつつも通常の創作活動との差異が薄いものもありますが、海外の先進的な事例ではレッジョ・エミリア教育の特徴的な部分が生かされたものが多くあります。
長期プロジェクトの例:テントの中の影
これは園児の家族と一緒におこなうクラスキャンプ旅行のなかで、保育者が園児の興味をもとに策定したプロジェクト内容です。
子どもたちはテントのなかで懐中電灯を動かすうちに、テントの天井や壁に影ができることに気づきました。
影の存在に興味をもっている子どもたちに対して、保育者は以下のような活動を設定しました。
- 自分の影がどこにあるのか考えてみよう。また、自分の影が見えると思う場所、見えないと思う場所に行ってみよう。
- おたがいの影を触れあわせてみよう。
- 体に触れずにおたがいの影が触れあうようにしてみよう。
また後日、影に関する長期的なプロジェクトも設定されました。
子どもたちは影が動くかどうかや、影のできるしくみについて探究をおこない、発表をおこないました。
(参考文献:英語)
短期プロジェクトの例:粘土の顔の彫刻
粘土をこねて木に貼り付け、木の枝や葉、実をつけて顔をつくる遊びです。自然の物をつかった遊びを通じて、子どもは簡易的な自然界への冒険を体験することができます。