甥っ子は運動が得意なんですけど、字は苦手なんですよ〜。
微細運動は粗大運動のあとに発達するから、別にあせる必要はないわよ。
うちの甥っ子は粗大ごみじゃありませんよ〜。
わかってるわよ……。
こんにちは、Yunです!
子育てについて調べるなかで「子どもの運動神経を良くするにはどうしたらいいんだろう」「子どもにはどんな運動をさせるのがいいのだろう」と疑問に感じていませんか?
そんな悩みをお持ちの方に、こちらの記事では子どもの運動能力の種類や、運動能力を高める方法について解説します!
この記事を読めば子どもが運動を楽しみながら得意になるための方法がわかります!
身体能力・運動能力・運動神経の違いとは?
運動の能力をさした言葉として「身体能力」や「運動能力」、「運動神経」などの言葉を耳にしたことがあるかと思います。
これらの言葉にはどのような違いがあるのでしょうか。
明確な定義はない
実は、「身体能力」や「運動能力」、「運動神経」という言葉に明確な使い方の決まりはありません。
ここでは公的機関によるそれぞれの言葉の使い方を紹介します。
文部科学省の「身体能力」の用法
文部科学省管轄の中央教育審議会の答申では、「身体能力」に関して以下のような記述があります。
身体能力の要素
1)「短時間に集中的に力を発揮する身体能力」
- 全力で加速した後,数十メートルは最高スピードを維持して走ることができること
- 全身を使って、その場で高く、あるいは遠くへ跳ぶことができること
2)「持続的に力を発揮する身体能力」
- 一定のペースで数分間以上走り続けることができること
- 自分の体重と同じ程度のものを,一定時間以上支えたり,運んだりすることができること
3)「柔軟性を発揮する身体能力」
- 膝を伸ばしたまま上体を一定の深さまで曲げること
4)「巧みに身体を動かす身体能力」
中央教育審議会「体育の目的の具体的な内容-すべての子どもたちが身に付けるべきもの-」
- 水の中で,浮いたり,潜ったり,進んだり,息継ぎをすることができ,二つ以上の泳ぎ方で一定の距離を泳ぐことができること
- 身体を,柔らかく動かしたり,力強く動かしたり,リズムを取って動かすことができること
- マットや鉄棒で,体を支えたり,回ったりすることができること
- 大きさの異なるボールを,手や体や足を使って,捕る,投げる,打つ,けるなど様々に操作することができること
- 運動やスポーツの用具をうまく操作することができること
- 危険やけがを回避できるよう手を使うなど安全に転がったり,飛び降りたりすることができること
https://www.mext.go.jp/b_menu/shingi/chukyo/chukyo0/toushin/attach/1395089.htm
ここでは、身体能力を後天的に得られる技術的なものとして解釈しているととらえられます。
文部科学省による「運動能力」の用法
文部科学省管轄の幼児期運動指針策定委員会は「幼児期運動指針」のなかで「運動能力」という語を以下のように用いています。
2 幼児期における運動の意義
(1) 体力・運動能力の向上
特に幼児期は、神経機能の発達が著しく、タイミングよく動いたり、力の加減をコントロールしたりするなどの運動を調整する能力が顕著に向上する時期である。この能力は、新しい動きを身に付けるときに重要な働きをする能力であるとともに、周りの状況の的確な判断や予測に基づいて行動する能力を含んでおり、けがや事故を防止することにもつながる。このため、幼児期に運動を調整する能力を高めておくことは、児童期以降の運動機能の基礎を形成するという重要な意味を持っている。
幼児期運動指針策定委員会「幼児期運動指針」
https://www.mext.go.jp/a_menu/sports/undousisin/1319771.htm
ここでは運動能力を運動を調整する能力とし、これも後天的に得られる技術的なものとして解釈しているようです。
「運動神経」は学術的な用語ではない
「運動神経」という語には運動のセンスや身体を活用する能力のようなイメージがありますが、論文や公的機関ではあまり用いられていません。
また、「運動神経」という神経系が存在するわけでもありません。
ネット上の記事に見られる使い分け
インターネット上では「運動神経と運動能力は別」「身体能力は先天的なもので、運動能力は後天的なもの」とする記事も多く見受けられます。学術的な定義の問題はさておき、これらの指導上・実践上の言葉の整理は否定されるべきものではありません。
運動に関する言葉の使い方を分けることで、運動機能に関する理解が整理されるメリットがあります。
この記事のなかでは、一般的に運動神経・身体能力・運動能力と呼ばれているものを総称して「運動能力(Motor Skills)」と表現します。
「motor skills」は一般的に日本語の「運動神経」のような使われ方をする語ですが、学術上も用いますし、スキルという単語のとおり後天的に得る運動技術としての意味ももっています。
どれも似たような言葉だということですね。
幼児の運動は粗大運動と微細運動に分けられる
幼児の運動能力は、まず粗大運動を身につけ、そのあと微細運動ができるようになるという順番で発達します。
これらはどちらも重要な運動能力です。
粗大運動とはなにか
粗大運動(Gross Motor Skills)とは、乳児期に頭を持ち上げることや、幼児期に走ること、小学校でスポーツをすることなどにかかわる運動です。
粗大というと「雑な」「大雑把な」のような印象を受けるかもしれませんが、原語の「gross」は「全体の」「総◯◯」という意味があります。ここでは体全体に関する、という意味で使われています。
粗大運動は、幼児期の筋力、バランス、体幹の強さ、姿勢制御、持久力などの運動能力を発達させます。
子どもがあつかえる体の部位は、体の中心から外側に向かって自然に広がっていきます。
これは、腕や脚を器用に動かす前に、体幹や骨盤をつかって体を動かす必要があることを意味します。
したがって、このあと身につける微細運動の能力(指の強さやコントロールなど) は、子供が先に身につける粗大運動の能力に依存します。
粗大運動能力は、子供時代に自由遊びや大人が指導する活動を通じて、さまざまな方法で発達させることができます。
走るとか歩くとか、シンプルな動きのことなんですね。
粗大運動が重要な理由
粗大運動が十分に発達していない場合、次のような結果になる可能性があります。
「正中線を越える動き」とは、右側の手や足で左側の手や足にふれたり、その反対の動きをしたりすることをさします。右手で左の肘にふれることや、腕を組むことなどが含まれます。
これら体の中心線(正中線)をクロスする動きを達成するには体の左右の部位を協調させることが必要ですが、粗大運動の能力が未発達の場合、これらが苦手になります。
粗大運動は「基本的な動き」
ここで紹介した粗大運動の概念は、文部科学省が公開している「幼児期運動指針」のなかでの「幼児期に獲得しておきたい基本的な動き」と類似しています。
「幼児期運動指針」には以下のような記載があります。
幼児期において獲得しておきたい基本的な動きには、立つ、座る、寝ころぶ、起きる、回る、転がる、渡る、ぶら下がるなどの「体のバランスをとる動き」、歩く、走る、はねる、跳ぶ、登る、下りる、這(は)う、よける、すべるなどの「体を移動する動き」、持つ、運ぶ、投げる、捕る、転がす、蹴る、積む、こぐ、掘る、押す、引くなどの「用具などを操作する動き」が挙げられる。通常、これらは、体を動かす遊びや生活経験などを通して、易しい動きから難しい動きへ、一つの動きから類似した動きへと、多様な動きを獲得していくことになる。
幼児期運動指針策定委員会「幼児期運動指針」
https://www.mext.go.jp/a_menu/sports/undousisin/1319771.htm
基本的な動きの経験をくりかえして、幼児は易しい動きから難しい動きができるようになります。
基本的な動きの3分類 | 含まれる動きの種類 |
---|---|
体のバランスをとる動き | 立つ、座る、寝転ぶ、起きるなど |
体を移動する動き | 歩く、走る、登る、降りる、よけるなど |
用具などを操作する動き | 持つ、投げる、蹴る、積むなど |
基本的な動きのあとにむかえる「難しい動き」や「多様な動き」には、以下で紹介する微細運動の能力が欠かせません。
「基本的な動き」についてはこちらの記事で解説しています。
子どもの粗大運動の能力を向上させる方法
粗大運動の能力は以下のような活動で伸ばすことができます。
2~3歳ごろ
手あそび歌、単純なボール遊びなど
3~4歳ごろ
すべり台、ブランコ、マットの上で転がる運動、平均台の上でバランスをとる遊びなど
4~5歳ごろ
なわ跳び、キャッチやシュートをともなうボール遊び、音楽に合わせてリズムをとる遊びなど
5~6歳ごろ
フルーツバスケット、影踏み鬼、手つなぎ鬼などのルールが複雑な遊び
微細運動とはなにか
微細運動(Fine Motor Skills)の能力とは、文字を書いたり、靴ひもを結んだりするなどの特定の機能を実行するために、子供が体の小さな筋肉を制御する能力を指します。
微細運動をおこなうためには手、指、目、口などの小さな筋肉を動かします。
こっちはけっこう応用的な動きって感じですね。
粗大運動と微細運動の違い
粗大運動とは、子供が歩く、登る、バランスをとるための大きな筋肉の発達をさします。
微細運動とは、子供が鉛筆を持ったり、シャツのボタンをはめたりできる小さな筋肉の発達をさします。
微細運動には、目と手の調整や目と指の調整、指の力のコントロール、つま先・舌・目などの筋肉の発達が求められます。
運動能力は、頭から下に向かって、そして体から外に向かって(手足に向かって)発達します。その後、小さな筋肉が強化されます。
したがって、粗大運動能力は細かい運動能力よりも先に発達します。
遊具に登ったり、走ったり、歩いたりするのは上手だが、まだ鉛筆を持つことやはさみをコントロールすることを学んでいる未就学児は、粗大運動は発達しているが微細運動は未発達な状態と言えます。
うちの甥っ子はまだ5歳なんで、字が書く力はこれから伸びるんですね。
微細運動が重要な理由
微細運動の能力が重要な理由は、日常の動作が細かい動きであふれているからです。
子どもたちは、服を着る、靴ひもを結ぶ、食事の準備、その他の身の回りのことなど、日常の基本的な作業を行うために、体の複数の部位を協調させる能力を発達させなければなりません。
学校では、切り取り、貼り付け、線を書くことができる必要があり、書くことを学ぶには微細運動の能力が不可欠です。
小学校に進んで子供たちが文字を書くことを教わる前に、鉛筆を制御するための小さな筋肉を発達させなければなりません。
子どもが幼いうちにできるだけ早く名前を書いたり手紙を書いたりするように教えたくなるかもしれませんが、あまり幼い年齢ではそれらは必要ありません。
3〜4歳前後の指先の筋肉は、鉛筆を上手に扱えるほど発達していません。
幼い頃は、主に指の筋肉を発達させる活動を行うことによって、書くためのスキルを発達させる時期です。
身体的発達は、社会的、情緒的、知的発達とともに、子どもの成長に関する4つの主要な領域の 1 つです。
微細運動の年齢による発達の違い
5歳までの子どもの微細運動がどのように発達するか紹介します。
子どもがこれらすべての微細運動を達成すると、小学校に進んだあともスムーズに書きとりや工作に対応できるようになります。
1歳半まで
乳児期および幼児期の初期に、子どもは次のことを学びます。
2歳
2歳では以下のことを覚えます。
3歳
3歳では次のことができます。
4歳
4歳ごろ、次のことを学びます。
5歳
5歳からは次のことができるようになります。
この年齢と能力の関係はあくまで目安よ。この年齢どおりに発達していないからといって特にあせる必要はないわ。
(参考リンク:Mary D. Sheridan「From Birth to Five Years: Children’s Developmental Progress」)
子どもの微細運動の能力を向上させる方法
粗大運動の能力は以下のような方法で伸ばすことができます。
お絵描き
絵を描くことは、子どもの創造性を伸ばし、認知能力を発達させ、色彩感覚を豊かにさせるとともに、細かい筋肉の発達に役立ちます。子どもは1歳前後からクレヨンなどを使った落書きをはじめます。
クレヨンを握れるだけでも粗大運動からの進歩があります。子どもがくりかえし絵を描くことを尊重しましょう。
わたしお絵描き大好きでした!
紙工作
紙を切ったり貼ったりすることは子どもの運動能力を伸ばすための重要なスキルです。
紙を切るためには片手ではさみをもち、片手で紙を押さえなければいけません。はさみを通すのに合わせて、紙をもつ手にこめる力を調節する必要もあります。
最初は自由なかたちに切ることからはじめ、発達の段階に合わせて線にそって切る練習をさせましょう。
シール遊び
シールをめくることは幼いあいだは難しく感じられます。まずは大人がシールをはがしてあげて、子どもには貼ることだけをまかせましょう。
子どもはシールをつままなければいけません。それだけでも大変な作業です。
自分でシールをはがせるようになれば、指先の筋肉をコントロールする能力が発達している証拠です。
わたしシール遊び大好きでした!
粘土遊び
子どもは粘土が大好きです。粘土の感触は、子どもの身体感覚を刺激します。創造性も豊かになります。
粘土遊びはちぎったり丸めたり、伸ばしたりする作業がともないます。
しゃぼん玉遊び
口で吹いてしゃぼん玉を飛ばすためには、口先の筋肉を使います。
ストロータイプの場合、ストローと口の隙間から空気が漏れると上手にしゃぼん玉が飛びません。練習をくりかえし、ある日コツをつかむことで口の筋肉を上手に使うことができるようになります。
ジグソーパズル
パズルは認知能力の発達に役立ちます。また、微細運動の能力も発達させます。
はじめは10ピース程度のパズルで十分です。パズルは楽しいですが、子どもにとっては一種の挑戦です。ピースの凹凸を合わせることは幼児にとって簡単なことではありません。
最初は手全体で押しこむようにピースをはめますが、次第に指先を使ってピースを合わせるようになります。
ブロック遊び
ブロック遊びが子どもの発達に与える効果は絶大です。
ブロック遊びはもったり乗せたりする点で粗大運動の発達にも効果があります。
ペグボード
ペグボードは小さな突起があるペグを、穴つきのボードにはめこむおもちゃです。ハンマートイや「大工さんごっこ」と呼ぶものも同様の遊び方をします。
小さなペグをもち、穴に正しくさすことは子どもにとって喜びでもあり、指先のコントロールの練習にもなります。
ボードゲームやカードゲーム
4歳ごろからは簡単なすごろくや、コマを動かしたりカードを使ったりする遊びができるようになります。これらはどれも小さいか薄く、粗大運動だけではまかなえない動きが必要になります。
これらの遊びにはルールがあり、子どもの自己調整能力の発達にも役立ちます。
子どもが運動が苦手でもあせらないで!
粗大運動も微細運動も、練習によって発達しますし、経験がなければ発達が遅れます。
紹介した年齢による発達段階は個性によって前後する場合があり、今はまだできなくても生活するなかでいずれできるようになる場合がほとんどです。
問題が深刻であったり、あなたの悩みが深い場合は病院での受診をおすすめしますが、軽度の場合はまずご家庭で一緒に数週間練習し、経過を観察してみましょう。
また、最終的にどれくらい運動が得意になるかというのも個人差があります。これは個性と呼ぶべきものですので、子どもを周囲と比べて子どもの自尊心を低下させることがないようにしましょう。