STEM教育やSTEAM教育とは? 日本と世界の取り組みの違いは?

子育て
2年目ちゃん
2年目ちゃん

ステム教育ってなんですか?

ママ先輩
ママ先輩

STEMは科学・技術・工学・数学の英単語の頭文字よ。いわゆる理数系の能力を伸ばすために注目されている教育理念ね。

2年目ちゃん
2年目ちゃん

技術・工学? なんか専門的で難しそうです……。

ママ先輩
ママ先輩

内容は一概にはいえないけど、STEM教育の本質は理科や数学を現実問題とつなげてワクワクしながら学べるようにすることにあるのよ。

こんにちは、Yunです!

教育について調べるなかで「STEM教育ってなに?」「STEMとかSTEAMってなんなの?と疑問に感じていませんか?

そんな疑問をお持ちの方に、こちらの記事ではSTEM教育とSTEAM教育の違いや、日本と世界の取りについて解説しています!

この記事はこんな人におすすめ!
  • STEM教育とはなにか知りたい人
  • STEAM教育とはなにか知りたい人
  • 世界の先進的な取りくみについて知りたい人
  • 日本がおこなっている取りくみについて知りたい人
記事の内容まとめ
ママ先輩
ママ先輩
  • STEM教育は科学・技術・工学・数学を横断的に学習する教育哲学よ。
  • STEAM教育は、STEM教育の概念を国語・歴史・芸術などに拡張した概念ね。
  • 日本はSTEAM教育推進をかかげていて、SSHの指定や理数探究の設定など高校教育を中心に改革を進めているわ。

この記事を読めば次世代にSTEM教育をほどこすメリットがわかります!

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STEM教育とはなにか

STEM教育のSTEM(ステム)とは以下の4つの単語の頭文字をとった言葉です。

  • Sience(科学)
  • Technology(技術)
  • Engineering(工学)
  • Mathematics(数学)

また、「stem」という英単語には植物の茎・幹という意味があるので、これら4つの学問が現代を生き抜くのに必要な力の根幹であるという意味も込められています。

広義のSTEM教育

STEM教育という言葉は、従来使用されていた「理数系」の代替として用いられている場合があります。

昔からあるタイプの計算ドリルや、従来式の講義型授業に対して「STEM教育」という語が用いられていたら、それは中身は昔のまま、単に「理数系」を「STEM教育」という流行り言葉に置きかえただけの可能性があります。

2年目ちゃん
2年目ちゃん

昔からある言葉を英語に直しただけなら、あんまり中身ないですね。

狭義のSTEM教育

実際の(狭義の)STEM教育は、ただ科学・技術・工学・数学の4つの頭文字を並べただけのものではありません。

STEM教育は4つの分野を横断的に統合する教育プログラム(教育哲学)のことをさします。

STEMのうちに数学が含まれているので、たとえば小学校で算数の授業を受ければSTEM教育に部分的にふれたことにはなります。しかし、それぞれを個別的に学習することはSTEM教育に真にふれたことにはなりません。

ママ先輩
ママ先輩

以下は狭義のSTEM教育の特徴よ。

STEM教育の特徴

分野横断的な学習

STEM教育では4つの分野は個別ばらばらのものではなく、つながりをもった能力としてあつかいます。

実験や活動などの学習プログラムを通じて、4分野の知識を組みあわせて学びを生きた経験にしていくのがSTEM教育です。

STEM教育の4つの分野のうち、中学〜大学で特に重要になるのは「Science(科学)」「Mathematics(数学)」です。

「Technology(技術)」と「Engineering(工学)」は科学・数学が基盤となっており、科学・数学の知識を組みあわせることで理解できるようになります。

「サイエンス = 理科」でもあるので、つまりSTEM教育でまず重要になるのは理科と数学です。

ただし、幼児〜小学生向けの実験キットやSTEM教育玩具は「学びに備える」「楽しく学ぶ」がコンセプトなので、理科や数学の経験がなくても楽しめるものがたくさんあります。

2年目ちゃん
2年目ちゃん

まずは小さいうちから、楽しめるものにふれさせたいですね!

現実世界への応用を重視する

STEM教育は現実世界での応用を重視します。そのため、純粋に学術的な内容をあつかうよりも、4つの分野の知識を組みあわせて目の前の問題をどうやって解決するか、が学習の中心となります。

自分で学び、自分で解決していく子どもを育てる

知識を現実世界で応用する能力(= 実践力)を育むSTEM教育では、従来式の暗記重視・講義座学タイプの学びではなく、子ども自身が手を動かし頭を駆使してアクティブに学ぶスタイルをとります。

STEM教育では、答えの存在する問いが与えられることはあまりありません。多くの場合、4つの分野で得た知識を活用して、自分たちが妥当だと思える解答を導くことになります。

たとえば経済産業省が運営する「STEAMライブラリー」では学生が考案したエネルギー問題の解決策が掲載されています。

タイヤの振動発電や超薄型有機太陽電池で車を動かすアイデアなどは、まさに知識を組みあわせて問題解決を試みる学習スタイルになっています。

STEAM教育とはなにか

STEAM教育(スティーム教育)とは、STEM教育に「A」を足したものです。一般的にこのAは「Arts(芸術)」または「Liberal Arts(教養)」の意味で用いられますが、近年はリベラルアーツの意味で用いることが多くなっています。

ただし、アートにしてもリベラルアーツにしても、その中身についての厳密な定義はなく、人によって解釈に差が生まれているのが現状です。

2年目ちゃん
2年目ちゃん

なんかふわっとしてませんか?

ママ先輩
ママ先輩

STEAMという語呂の良さが先行してしまっている感じはあるわ。

ただ、いずれにしても理数能力を特別視しているのは変わらないわね。

STEM + Arts(芸術)

STEAM教育は多様なとらえられ方をしていますが、元祖の提唱者はジョージェット・ヤクマン女史であると見なされています。

ヤクマンは2008年に発表した論文でSTEM教育にアート(芸術)を組みこみ、さらにそれらが相互に連携する必要があることも示しました。(参考文献:英語

その後、さまざまな研究者によってSTEM教育にアートを足すことは「創造性の発育につながる」「理数教育と芸術教育にはもともと親和性がある」などの説明が加えられていきました。

STEM + Liberal Arts(横断的な知識)

近年、日本ではSTEAM教育とはSTEM教育にリベラルアーツを加えた概念であると解釈するのが主流になっています。

リベラルアーツとは、一般に「教養」と訳される場合が多いのですが、ニュアンスに差があるので注意が必要です。

日本語で教養というと「専門性が低い常識的・一般的な知識」のようなイメージをいだく人もいますが、リベラルアーツは文理を問わない横断的な知識という意味での「教養」であり、人文科学も自然科学も芸術も含んだ概念になっています。

科学や数学を重視するSTEM教育に、領域横断的なリベラルアーツを加えることがどのような内容をさすかは、これもまた研究者によって解釈に差が生まれています。

多くの見解で一致しているのは、「国語・歴史・芸術なども領域の対象としつつ、理数能力の発展につなげること」がSTEAM教育であるという考え方です。

ママ先輩
ママ先輩

STEM教育をSTEAM教育として解釈しなおすことで、小中学校や普通科高校など幅広い学校でも取り入れやすくなったわ。

文部科学省が推進しているのはSTEAM教育

文部科学省が推進しているのも、STEM教育ではなくSTEAM教育です。

第2次安倍内閣時代に設置されていた教育再生実行会議ではSTEAM教育を「各教科での学習を実社
会での問題発見・解決にいかしていくための教科横断的な教育」
と定義しています。(参考文献

教科横断的な学習には現在「総合的な探究の時間」という科目が設置されています。これをSTEAM教育と置きかえていくことは、ただはやり言葉に言いかえることではなく、AI分野やデータサイエンス分野に関する教育を充実させていく目的があります。

ママ先輩
ママ先輩

日本のSTEAM教育の実践については、記事の後半でも紹介します。

STEM教育とSTEAM教育の違い

STEMとSTEAM、主流なのはどっち?

結論から言えば、STEM教育とSTEAM教育ではSTEM教育のほうが現在よく用いられています。

STEMとSTEAMは似た使われ方をしている言葉ですが、どちらがよく使われているのか2018年6月から2023年6月の過去5年間の推移をGoogleトレンドで調べてみました。

単純にSTEMとSTEAMで比較すると関係のない分野もひろってしまう(steamは同名のゲームサービスがある)ので、「教育」と合わせて調べています。

青い線がSTEM教育、赤い線がSTEAM教育です。STEM教育は振れ幅は大きいものの、つねにSTEAM教育よりも検索されていることがわかります。

むしろSTEAM教育が検索トレンドとして低空飛行をつづけていることが目立っています。文部科学省はSTEAM教育の推進をかかげていますが、なかなか一般には浸透していない様子です。

ママ先輩
ママ先輩

Googleトレンドは期間内のいずれかを100とした相対比で表示している点には要注意よ。

続けて、国際的にSTEM教育とSTEAM教育のどちらが使用されているかを調べます。

日本版と同じく、青い線がSTEM、赤い線がSTEAMです。

こちらも日本と同じくSTEM教育のほうが主流であることがわかります。

Googleトレンドから読み取れることではありませんが、教育分野において「STEM」という用語は欧米でかなり普及しており、これについては日本の比ではありません。そもそもSTEM教育という言葉はアメリカが提唱しだした概念です。

STEMが知育玩具や大学の学問領域に広く用いられているのに対して、STEAMという言葉は教育分野に限って使われている印象があります。

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日本におけるSTEM教育

日本の理数教育の先進性

国際教育到達度評価学会(International Association for the Evaluation of Educational Achievement / IEA)が実施した2019年の国際数学・理科教育動向調査(Trends in International and Mathematics Science Study / TIMSS)では、日本の小中学生の理科・数学の成績は世界上位にランクインしています。

TIMSS2019では小学校は64か国、中学校は46か国が参加するなか、日本は小学校の算数5位・理科4位、中学校の数学4位・理科3位の成績をおさめています。

順位小・算数小・理科中・数学中・理科
1位シンガポールシンガポールシンガポールシンガポール
2位香港韓国台湾台湾
3位韓国ロシア韓国日本
4位台湾日本日本韓国
5位日本台湾香港ロシア
TIMSS2019の成績

シンガポールが全項目で1位を取得していることが目をひきますが、アジア勢の理数教育が世界的に高いレベルにあることが感じられます。

実は日本はこれまでのTIMSSでも世界2〜5位圏をキープしつづけています。TIMSS2019は、これまでどおりの位置を維持することができた、という見方もできます。

ただしこれは、言い換えるとなかなか上にあがることができていないという意味でもあります。

現状に甘んじることなくより理数教育の質を高めていくためには、課題ものこされています。

2年目ちゃん
2年目ちゃん

日本すごいじゃないですか! 知らなかったな〜。

日本の理数教育の課題

日本の学校教育では、算数(数学)・理科が楽しいと感じている生徒が小学校と中学校で大きな差が開いています。

特に算数(数学)は小中ともに国際平均を下回っています。

表をみると「楽しい」と感じる生徒の割合は近年上昇してきており、教育改善の効果が表れてきているともいえますが、まだまだ学校による理数教育に課題が残されているのを感じます。

出典:文部科学省「STEAM教育等の教科等横断的な学習の推進について」

また、数学や理科を使うことが含まれる職業への関心も国際平均を大きく下回っています。

出典:文部科学省「STEAM教育等の教科等横断的な学習の推進について」
2年目ちゃん
2年目ちゃん

せっかく成績が世界上位なのに、なんか残念です……。

SSH(スーパーサイエンスハイスクール)認定

SSH(スーパーサイエンスハイスクール)とは、文部科学省が認定する先進的な科学技術・理数教育をおこなう高等学校のことです。

2023年時点で全国に約250校あり、それぞれにSSHとしての特別予算が配分され、自由度の高い実験や研究を高校生のあいだから挑戦できるようになっています。

SSHの特徴は、先進的な取りくみをおこなう高校だからこそ、学習指導要領の枠を超えた授業内容が認められていることです。

ふつうの高校の授業内容は学習指導要領の枠内でおこなうように決められています。これは、どの高校であっても授業内容がある程度均一化するためのしくみです。

SSHの場合、SSHでおこなわれた先進的な取りくみを文部科学省が「一般校にも普及させたい」と感じると、それが学習指導要領に盛り込まれます。つまり、SSHは学習指導要領をつくりかえる側の存在といえます。

旧弊的な学校教育では児童生徒の理数ばなれが進むばかりでしたが、SSHの登場とその自由度の高い研究が、日本の理数教育を立てなおしています。

指定校数全国約250校(うち重点枠12校)
指定期間原則5年
予算(案)約24億円
STEAM教育コーディネーター配置数15名
令和5年度(2023年)情報
2年目ちゃん
2年目ちゃん

学習指導要領を変えちゃうなんですごい!

学校教育におけるSTEAM教育

一般的な普通科高校では、課題研究的な科目として「総合的な探究の時間」(以下、探究の時間)が設定されています。

STEAM教育も探究の時間も課題研究をとおして学びを得ることや、教科横断的な学習をおこなうことは共通しています。学校によってはSTEAM教育的なことを探究の時間のなかでおこなっていることもあります。

ただし、STEAM教育の「科学技術・創造性に特化した人材育成」という理念は探究の時間には含まれていません。目的のちがいは、手段のちがいとして表れます。探究の時間は多くの学校で「討論のしかた」「発表のしかた」に重点が置かれており、その内容が理数とかかわっている必要はありません。

STEAM教育も本来さまざまな社会領域の問題が対象ですが、それらを科学的思考で対処するプロセスに重点を置いています。

STEAM教育総合的な探究の時間
目的■科学・技術分野の経済的成長や革新・創造に特化した人材育成
■STEAM分野が複雑に関係する現代社会に生きる市民の育成
■実社会や実生活との関わりにおいて、自己の在り方生き方を考えながら、よりよく課題を発見し解決していくための資質・能力の育成
対象・領域■STEM分野を幹としつつも扱う社会課題によって様々な領域を含む。
(例えば、科学・技術分野に特化した課題から、ART/DESIGN、ROBOTICS、eSTEM(環境)、国語や社会に関する課題など)
■特定の教科・科目等に留まらず、横断的・総合的であり、実社会や実生活における複雑な文脈の中に存在する事象が対象
(例えば、現代的な諸課題、地域や学校の特色に応じた課題、生徒の興味・関心に基づく課題、職業や自己の進路に関する課題など)
学習課程■各教科・領域固有の知識や考え方を統合的に活用することを通した問題解決的な学習を重視■複数の教科・科目等における見方・考え方を総合的・統合的に働かせるとともに、実社会や実生活における複雑な文脈の中に存在する問題を様々な角度から俯瞰して捉え、考えていく「探究のプロセス」を重視
■解決の道筋がすぐには明らかにならない課題や、唯一の正解が存
在しない課題に対して納得解や最適解を見いだすことを重視
教育課程
(カリキュラム)
(学校全体の仕組みとして機能が期待できる)■教育目標との関連を図る教育課程の中核。各学校において目標や
内容を設定
■他教科等及び総合的な探究の時間で身に付けた資質・能力を相互
に関連付け、教科等横断的な視点で編成・育成
参考:文部科学省「STEAM教育等の教科等横断的な学習の推進について」
2年目ちゃん
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私の時代には「探究の時間」って名前の授業じゃなかったな〜。

SSH(スーパーサイエンスハイスクール)を中心に、日本の学校教育にもSTEAM教育が取り入れられてきています。

SSHや理数科のある高校では、上記「総合的な探究の時間」とは異なる「理数探究」という科目が設定されています。

STEAM教育理数探究
目的■科学・技術分野の経済的成長や革新・創造に特化した人材育成
■STEAM分野が複雑に関係する現代社会に生きる市民の育成
■数学的な見方・考え方や理科の見方・考え方を組み合わせるなどして働かせ、探究の過程を通して、課題を解決するために必要な資質・能力の育成。
対象・領域■STEM分野を幹としつつも扱う社会課題によって様々な領域を含む。
(例えば、科学・技術分野に特化した課題から、ART/DESIGN、ROBOTICS、eSTEM(環境)、国語や社会に関する課題など)
■自然や社会などの様々な事象から数学や理科などに関する課題を
設定。
学習課程■各教科・領域固有の知識や考え方を統合的に活用することを通した問題解決的な学習を重視■数学的な手法や科学的な手法などを用いて、仮設設定、検証計画の立案、観察、実験、調査等、結果の処理を行う、一連の探究過程の遂行や、探究過程を整理し、成果などを適切に表現することを重視。
教育課程
(カリキュラム)
(学校全体の仕組みとして機能が期待できる)■アイデアの創発、挑戦性、総合性や融合性の視点を重視した、従前の教科・科目の枠にとらわれない科目設定。
参考:文部科学省「STEAM教育等の教科等横断的な学習の推進について」

理数探究は理科的・数学的思考を組みあわせて課題を解決することを目的としており、まさにSTEAM教育を日本の学校教育で体現しようとした科目になっています。

残念ながら理数探究が設定されている学校はSSHなどの一部の学校に限られています。

「わが子に理科や数学を好きになってほしい」「理科や数学を楽しめるワクワクする授業をしてほしい」と考えている保護者の方は、SSHや理数科の設置された高校をさがしてみるのがおすすめです。

海外におけるSTEM教育

アメリカ

アメリカはSTEM教育にとても力をいれています。ただしそれは、「アメリカはSTEMが遅れている」という認識による焦りからきています。

TIMSS2019ではアメリカの小学校・算数が15位、中学校・数学が12位となっており、世界の理数教育をリードする立場には立てていません。

米シンクタンクであるピュー研究所の調査によると、米科学者の92%がアメリカの科学的成果は「世界最高または平均以上」だと考えているのに対して、米科学者の46%がアメリカの幼稚園から高校までのSTEM教育を「平均以下」と評価していると発表しました。(参考文献:英語

アメリカの高校の半数以上では微積分がカリキュラムになく、40%が物理がなく、25%が化学がなく、20%が数Ⅱにあたる内容がありません。このようにアメリカは地域によって高校の質の差がはげしく、通う高校によってはSTEM教育にふれることが難しいことが課題となっています。

シンガポール

シンガポールはTIMSS2019ですべての項目で世界1位を取得し、2018年の学習到達度調査(Program for International Student Assessment / PISA)では数学的リテラシー・科学的リテラシーともに世界2位を取得したSTEM教育先進国です。

シンガポールのどのような取りくみが、STEM教育の質を伸ばしているのでしょうか?

注目されているのは、2001年にシンガポールの教育省が導入した教師が選べる3つのキャリアトラックです。

これは教師を適切に人員配置することにより、教科指導に関する専門知識をもった人材を育成しようとする取りくみです。

3つのキャリアトラックには担任業務をふくめた教室活動が中心の「ティーチングトラック」、校務リーダーの経験をつむ「リーダーシップトラック」、研究が中心の「シニアスペシャリストトラック」があります。

たとえば教師が数学の専門スキルを磨きたい場合はリーダーシップトラックやシニアスペシャリストトラックを選択し、学校全体の数学指導スキルを押し上げたり、教育委員会で研究や方針を指揮することもできます。

これらのトラックは教師の希望により変更が可能で、その柔軟性が教員間の専門知識の共有にも役立っています。

このキャリアトラック以外にも、教育省はEdTech推進、STEM教育推進をかかげていますが、それについては日本の文部科学省も同様です。

シンガポールのSTEM教育の成果につながっているもっとも特筆すべき取りくみは、教師の専門性を磨き、人員配置の効率化を高めたキャリアトラック・プログラムであると考えられます。

2年目ちゃん
2年目ちゃん

STEM教育には先生の専門知識が重要な気がします!

ドイツ

2019のOECD調査によると、OECD加盟国38か国のなかでSTEM分野の学士号をもっとも取得している国はドイツです。(参考文献:英語

ドイツのSTEM分野の学士号取得率は37%です。この調査はOECD非加盟国である中国とロシアを含みませんが、ドイツの数値は中国・ロシアを上回ると推定されています。

インド

インドは2015年に4億人以上の若者にさまざまなスキルを提供する「スキル・インディア」政策を打ち出しました。このスキル・インディアにはSTEM教育も含まれており、実際、インドは大学で理数分野を選択する学生の割合が34%と高い割合を保っています。(参考文献:英語

インドはエンジニア大国であり、大学に進学してエンジニアになることが人生の成功につながると信じている若者が多くいます。

2023年時点でインドは人口が約14億人と世界最大であり、STEM分野の選択率が34%といえど、実人数では世界最大級のSTEM人材を輩出しています。

STEM教育の重要性

テクノロジー分野はもっとも急成長をつづけている領域

多くの人が知っているとおり、ここ数十年でもっとも発展しつづけているのがテクノロジー領域です。

また、この潮流が今後変わることも考えにくいというのが定説です。

生成AIの発展により、今後奪われる職業が増えると見込まれています。反対に、それら生成AIの新しい活用法を見出したり、AIの開発そのものにかかわることは高い需要が見込まれます。

子どもにSTEM教育を提供することは、もっとも成功しやすいチャンスに子どもを近づけることにつながります。

女子の理系分野進出は支援されやすい

女子の理系人材育成については国・大学それぞれが支援を用意しています。女子専用の入試枠や、理系女子限定の奨学金が存在しています。

大学の理系進学に向けては、多くの高校が1年生の段階で選択し、2年生からコースに分かれます。

つまり遅くとも高1、なるべく幼少期〜中学のあいだで良質なSTEM教育にふれさせておかないと、子どもの理系進学は実現しにくくなってしまいます。

科学的な思考力をもつことは知能を高める

知能指数(IQ)はいくつかの能力をもとに測定されますが、そこには数学的な処理能力や論理的思考力などが含まれています。

このことは理数能力の育成がさまざまな知的能力に結びつくことを意味します。

また、知能指数は生後固定されたものではなく、教育によって向上することも知られています。

STEM教育によって、子どもの知的能力全般を高めることができます。

知能因子についてはこちらの記事でくわしく解説しています!

実践的な能力が磨かれる

従来の理数教育とSTEM教育のちがいのひとつは、STEM教育が現実的な課題の解決力を育てることに力を入れている点です。

そのため、STEM教育ではアクティブラーニングと呼ばれる、児童生徒が主体的に活動して学びをすすめる手法をとります。

また、グループ活動や発表などがともなうことも多く、課題に取りくむ粘り強さやコミュニケーション能力、プレゼンテーション能力などの育成にもつながります。

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