三色説ってなんですか?
人の色覚のしくみに関する理論よ。人はたった3つの色の組み合わせから、たくさんの色を知覚できているの。
こんにちは、Yunです!
色彩について勉強するなかで「三色説ってなに?」「三色説と反対色説ってどう違うの?」と疑問に感じていませんか?
そんな悩みをお持ちの方に、こちらの記事ではヤング – ヘルムホルツの三色説の覚え方についてわかりやすく解説します!
この記事を読めば、三色説と実際の色覚のしくみの関係がわかります!
ヤング – ヘルムホルツの三色説とはなにか
三色説(Trichromatic Theory)とは、人は3つの原色の組み合わせからあらゆる色を知覚しているという理論です。
1802年、イギリスのトーマス・ヤング(1773 – 1829)が可視波長域を処理する眼の受容器は3種類であると提唱し、このことを19世紀なかばにドイツのヘルマン・ヘルムホルツ(1821- 1894)が実験によって確認したので、「ヤング – ヘルムホルツの三色説」と呼ばれます。
色覚のしくみ
3つの受容体で色を認識する
人の網膜には色の知覚をになう3つの受容体があります。
これらはS錐体・M錐体・L錐体といい、それぞれ赤・緑・青の光に応答します。これら3つの色の組み合わせにより、わたしたちは数百万種類の色を認識することができます。
色を知覚するには、少なくとも2種類の光受容体の相互作用が必要なことがわかっています。
この錐体に異常が起きた場合、色覚異常を発症する原因になるわ。
光の受容体
三色理論の発表からずいぶん経ったのちに、錐体のしくみがわかりました(参考文献:英語)。錐体は異なる光に異なる反応を示し、その組み合わせが色覚を生じさせます。
ヒトの錐体は3種類存在します。長波長に反応するものはL錐体、中波長はM錐体、短波長はS錐体と呼びます。
これらの錐体にタンパク質のオプシンが含まれており、このオプシンの量の差によって吸収する最適波長の違いをつくっています。
脳による色の認識には、少なくとも2種類の錐体からの信号が必要です。脳は、入ってくる刺激の波長と強度の両方に関する情報を解釈する必要があります。刺激された各錐体からの信号を比較することで、脳は光を色に変換することができます。
三色説の功績
三色説は、従来の「人間の目には無数の光受容体がある」という発想を否定しました。三色説には論争もありましたが、のちの生理学の発展により、人間の光受容体が3種類という考えが事実であることが確認されました。
ヤングさんが色覚のしくみを予言していたんですね!
三色説の歴史
18世紀にニュートンによって色は物理的な光線(スペクトル)によってつくられることがわかりましたが、それが何種類の受容体によって知覚されているかは長い間わかっていませんでした。
マイヤーの色の三角形
ドイツの天文学者トビアス・マイヤーはすべての色は赤・青・黄の3つの顔料を混ぜ合わせることで生成できることを表した「色の三角形(カラートライアングル)」を作成しました。
3つの原色は0〜12の段階でほかの原色と混ぜ合わせることができます。この色の三角形は現代の光の物理理論を予測できていましたが、マイヤー自身はこのこととスペクトルの連続性との矛盾を解決できずにいました。マイヤーは「スペクトルには3種類の光線しかないかもしれない」と発言したと言われています(参考文献:英語)。
ジョージ・パーマーによる3つの受容体の予測
18世紀のイギリスの染料化学者ジョージ・パーマーは、世界ではじめて人間の目には色覚に関する3つの異なるメカニズムがあると予測した人物です。パーマーは網膜の表面に3種類の粒子があり、それが3種類の光を分類して、それぞれの光によって異なる動きをすると考えました。
パーマーの発想はヤングの三色説ほどではないにしても、人間の光の受容体(= 錐体)の数を予測したものでした。
トーマス・ヤングによる理論化
イギリスの科学者トーマス・ヤングは光は粒子であるという従来の定説をくつがえす「光の波動理論」を確立しました。そして、人は連続するスペクトルを3つの受容体によって知覚しているということをはじめて理論化しました。
ヘルマン・フォン・ヘルムホルツによる実験
ヘルムホルツは、参加者が3つの異なる光の波長を変更させて、感じる色を試験色と一致させるカラーマッチング実験をおこないました。
参加者は2つの波長のみを使用した場合には色を一致させられませんでしたが、3つの波長を使用した場合はスペクトル内のどの色でも一致させることができました。
このことにより、ヘルムホルツは人は3種類の受容体をもつことを実験で証明しました。
上の図はヘルムホルツによる光受容体の推定で、受容体1が赤(R)、受容体2が緑(G)、受容体3が青(Bl)に強く反応することですべての色を知覚していることを表しています。
ヤングさんが考えたことをヘルムホルツさんが証明したんですね。
反対色説との違い
ヤング – ヘルムホルツの三色説は、ヘリングの反対色説と合わせて勉強すると覚えやすくなります。
三色説は、人は無数の色をたった3色の色(= 赤、緑、青)で感知しているという画期的な理論でしたが、ドイツの生理学者エヴァルト・ヘリング(1834 – 1918)はこれに反対しました。三色説では「黄は赤と緑の混色」と考えますが、ヘリングは黄は根源的な色のひとつであり、あらゆる色は「赤または緑」と「青または黄」「黒または白」の組み合わせからつくられると説明しました。
ヘリングの反対色説は赤・緑・青・黄を基本色とすることから四色説と呼ぶこともあります(ヘリングは「黒 – 白」については色の色相ではなく明るさを決めるものととらえました)。
また、赤・緑・青・黄を心理四原色と呼びます。
三色説も反対色説も正しかった(段階説への発展)
網膜と視床の研究から、人に色覚のプロセスは網膜では三色説、視床では反対色説が成立することがわかりました。
つまり、網膜は3つの色を3つの錐体で受け取り(= 三色説)、そののち視床にある外側膝状体では「赤または緑」「青または黄」に選択的に反応して脳が感じる色を決めている(= 反対色説)が成立していることがわかりました。
このように色覚のプロセスの前半で三色説、後半で反対色説が成立するという考えを「段階説」と呼び、今日ではこれが色覚のプロセスの定説となっています。