ウェクスラー式知能検査ってなんですか?
日本で主流の知能検査のひとつよ。幼児用、児童用、大人用の3種類があるわ。
わたしも児童用なら高いスコアを出せるかも……。
いや、幼児用の方がいいかな……?
……それぞれ対象年齢が決まっているから、あなたは大人用しか受けられないわよ。
こんにちは、Yunです!
知能やIQについて調べるなかで「ウェクスラー式知能検査ってなに?」「WAISの検査内容は?」と疑問に感じていませんか?
そんな悩みをお持ちの方に、こちらの記事では先行研究をもとにウェクスラー式知能検査の特徴や、WAIS-Ⅳの検査内容について解説します!
この記事を読めば、WAIS-Ⅳがどのような知能検査かがわかります!
ウェクスラー式知能検査とはなにか
ウェクスラー式知能検査は、現在もっとも主流の知能検査です。
アメリカの心理学者であるデヴィッド・ウェクスラーは従来のビネー式知能検査が単一のスコアしか算出しないこと反感をもっていました。ウェクスラーは知能は単一の一般的知能因子ではなく、多様な心理的な要素によって構成されると考えました。また、ビネー式知能検査は子ども向けであり、大人の知能の測定に適さないことも不満に感じていました。
1939年に発表されたウェクスラー・ベルビュー知能指数の改訂版として、1955年にウェクスラーははじめてウェクスラー式成人知能検査(WAIS)を導入し、その後1949年にウェクスラー式児童用知能検査(WISC)、1967年にウェクスラー式幼児用知能検査(WPPSI)を開発しました。
ウェクスラー式知能検査の種類
ウェクスラー式知能検査は幼児用、児童用、大人用の3種類があり、それぞれ対象年齢が決まっています。
対象 | 名称 | 対象年齢 |
---|---|---|
幼児 | WPPSI(Wechsler Preschool and Primary Scale of Intelligence/ウィプシ) | 2歳6か月〜7歳3か月 |
児童 | WISC(Wechsler Intelligence Scale for Children/ウィスク) | 5歳0か月〜16歳11か月 |
大人 | WAIS(Wechsler Adult Intelligence Scale/ウェイス) | 16歳0か月〜90歳11か月 |
こちらの記事では大人用知能検査であるWAISについてくわしく解説していきます。
ウェクスラー式知能検査とビネー式知能検査の違い
ウェクスラー式知能検査に先駆けた知能検査として、ビネー式知能検査があります。これは欧米ではスタンフォード・ビネー式知能検査が有名ですが、日本ではスタンフォード・ビネー式知能検査をもとに田中寛一が作成した田中ビネー式知能検査がおこなわれています。
比較項目 | ウェクスラー式 | ビネー式 |
---|---|---|
開発目的 | ビネー式の欠点を補うため | 子どもの知能の発達の遅れに気づくため |
スコア | 全検査IQと群指数により、知能を複数の観点から表示する | 単一の知能指数(IQ)を表示する |
ウェクスラー式は多様な観点による結果を提供する
ウェクスラー式知能検査は知能全般をさす全検査IQのほか、観点ごとにことなる数値を群指数として表します。これにより、受検者はスコアのパターンからも自身の知能について判断することができます。たとえば、ある領域のスコアは高いが別の領域のスコアが著しく低い場合には、学習障害がある可能性を示唆します。
ウェクスラーはビネー式知能検査が単一のスコアしか提供しなかったために、代替となる知能検査としてウェクスラー式知能検査を開発しましたが、実はビネー式を開発したビネー自身も、知能は単一の要素からなるものではなく、もっと複雑だと考えていました。つまり、ウェクスラー式知能検査はビネーが期待する検査方法でもあったわけです。
ウェクスラー式のIQは偏差値としての側面ももつ
ウェクスラー式知能検査は平均が100となるように調整されたDIQ(偏差知能指数)が用いられています。これにより、測定されたスコアが同年齢グループの平均とどれくらい離れているかが理解しやすくなります。
初期のビネー式知能検査は測定された精神年齢(MA)÷実年齢(CA)×100で計算されます。この精神年齢は精神的な発達水準を表し、精神年齢と実年齢が一致したときにIQスコアが100になります。ただしこの100は同年齢グループの平均ではないため、自身の知能を偏差値的に把握することはできません。
WAIS-Ⅳとはなにか
WAIS(Wechsler Adult Intelligence Scale/ウェクスラー式成人知能指数)とは、ウェクスラー式知能検査のうち、16歳0か月〜90歳11か月を対象とした知能検査です。
WAISはくりかえしバージョンアップしていて、現行の成人用知能検査はWAIS-Ⅳが利用されています。
WAIS-Ⅲとの違い
WAIS-IIIと比較して、WAIS-IVは結晶性知能をあまり重視せず、流動性知能をより重視するようになりました。
WAIS-Ⅳで言語理解(VCI)の「理解」は補助検査で、結晶性知能に関する項目が基本検査から除外されています。
流動性知能にかかわる処理速度(WMI)で「記号さがし」と「符号」はともに基本検査に属しています。
WAIS-Ⅳの検査内容
WAIS-Ⅳでは以下の4つの群指数と、これらの合計である全検査IQが算出されます。
群指数 | 基本検査 | 補助検査 |
---|---|---|
言語理解(VCI) | 類似、単語、知識 | 理解 |
知覚推理(PRI) | 積木模様、行列推理、パズル | バランス、絵の完成 |
ワーキングメモリー(WMI) | 数唱、算数 | 語音整列 |
処理速度(PSI) | 記号探し、符号 | 絵の抹消 |
すべての群指数と全検査IQは平均が100、標準偏差が15になるように設計されています。これにより、知能を平均との差として理解することができます。
言語理解(VCI)
言語理解(Verbal Comprehension Index / VCI)は言語情報の理解・学習・検索能力や未知の問題を言語を用いて解決する能力を表します。
項目 | 検査内容 | 測定される能力 |
---|---|---|
類似 | 2つの単語がどのように似ているかを説明する | ・口頭推論 ・概念理解 |
単語 | 写真の中の物体に名前を付けたり、物体に提示された言葉を定義する | ・単語知識 ・言語的概念の形成 |
知識 | 一般的な知識に関する質問に答える | ・情報の獲得、保持、検索 |
理解 | 一般原則や社会的状況についての質問に答える | ・複雑な質問の理解 ・複雑な解答の形成 |
知覚推理(PRI)
知覚推理(Perceptual Reasoning Index / PRI)は視覚情報を理解力や未知の視覚的問題を解決する能力を表します。
項目 | 検査内容 | 測定される能力 |
---|---|---|
積木模様 | モデルと同じ模様を赤と白のブロックで再現する | ・視覚情報の理解 |
行列推理 | 抽象的な画像群の配列を見て、その配列に適合する別の画像を選択する | ・非言語的な問題解決 |
パズル | 組み合わせると見本と同じになるものを選ぶ | ・非言語推論 ・抽象的な視覚情報の理解 |
バランス | 天秤が釣り合うために適切な重りを選ぶ | ・定量的推論 |
絵の完成 | 提示された絵になにが欠けているのか答える | ・視覚情報の理解と整理 |
ワーキングメモリー(WMI)
ワーキングメモリー(Working Memory Index / WMI)は言語情報を短期記憶に保持する能力や情報を操作する力を表します。
項目 | 検査内容 | 測定される能力 |
---|---|---|
数唱 | 一連の数字を口頭で聞き、聞いた通りにくり返したあと、逆順にして答える | ・言語的な短期記憶 ・注意力 |
算数 | 口頭で行われる算数の文章題(時間制限あり) | ・数的情報の保持と操作 |
語音整列 | かなと数字を順番に並べる | ・言語情報の保持と操作 |
処理速度(PSI)
処理速度(Processing Speed Index / PSI)は情報の処理速度を表します。ただし、この尺度は注意力やペンを動かす速さなどほかの要素の影響を受ける可能性があります。
項目 | 検査内容 | 測定される能力 |
---|---|---|
記号さがし | 記号を見たあと、表示された記号群に見たものが含まれていたか答える | ・処理速度 ・集中力 |
符号 | 1〜9の数字がそれぞれ別の記号に対応したキーを使って、記号のリストを見ながら適切に入力する | ・処理速度 ・短期記憶 ・集中力 |
絵の抹消 | さまざまな絵の中から特定の絵に取り消し線をひく | ・処理速度 |
WAISの限界
WAISは以下のような能力を測定することはできません。
そのほか、WAISには以下の欠点があります。
自分のIQを知りたいときは、WAISの特徴を理解して利用することが大切なんですね!